◆UCMDの歴史
ドイツのウールリッヒさんという人が1930年に最初に報告した病気です.
◆UCMDの症状・特徴
体幹から遠い位置にある手足の関節は柔らかく過度に伸展、屈曲します.しかし、脊柱や首、肩、股関節のような
体幹から近い関節は拘縮して伸縮しません. 乳児期から筋力低下があり、発育・発達の遅れがあります. 股関節の
脱臼がよくみられます. かかとがハンマーのように突出しています.顔面筋の軽い罹患(りかん:病気にかかること)、
高口蓋(こうこうがい:正常の上顎より高い)があります. 汗っかきが多いと言われています.お座りまでできる人が
約半数、歩行可能となる人が約半数います.進行は停止しているか、進行していても緩徐(かんじょ:緩やか)です.
呼吸筋が侵されやすいので、人工呼吸器を必要とすることがあります.心臓はあまり侵されないといわれています.
患者さんは知的に優れているといわれています.
◆UCMDの原因
患者さんの数が少ないこともあって、まだ分子生物学的なアプローチは始まったばかりです.
◆UCMDの鑑別疾患
・他のCMD(先天性筋ジストロフィー)
※CMDはUCMDの他に福山型、エメリ・ドレフュス型、
硬直性脊髄型筋ジストロフィー等があります※
・先天性ミパチー
・脊髄性筋萎縮症(SMA)
・結合織疾患
他のCMDで遠位関節過伸展(体幹から遠い位置の関節が柔らか過ぎる)はなく、CK値もUCMDより高値です.硬直性
脊髄型筋ジストロフィーの経過はUCMDと似ているが、歩行能力は成人期まで保たれます.エメリ・ドレフュス型
筋ジストロフィー(EDMD)の経過は早期から側弯症を含む関節拘縮を伴う点や呼吸障害が出現する点でUCMDと似
ています.EDMDは早期から肘関節、足関節、頸椎の関節拘縮が来ることが特徴です.また、心臓障害がみられます
がUCMDではみられません.SMAでは舌の線維束性攣縮(せんいそくれんしゅく:舌のぴくぴくする動き)が特徴で
あり、針筋電図は神経原性変化を示します.結合織疾患では筋力低下や筋病理変化を伴いません。
※CK(クレアチンキナーゼ)=CKは筋肉の中にある酵素です.CKの値が高くなるという事は、筋肉細胞が壊れたことを意味します.CK値が
高くなる病気として筋ジストロフィーがあります.
◆COL6関連筋疾患 3病型
2.Intermediate from(UCMDとBMの中間型)
3.BM(ベスレムミオパチー)
◆検査所見
315±108(UCMD典型例):正常か正常上限数倍程度の上昇
・大腿部骨格筋MRIにおいて外側広筋(がいそくこうきん)の周辺部から障害され白く見える傾向があります.
◆予後について
全国調査によれば、UCMD患者の歩行不能年齢は8.8±2.9歳(11人の年齢は)でした. 肺活量(vital capacity)は10歳以前の
減少が顕著であり、NIV(人工呼吸器)導入年齢は11.2±3.6歳(13人の年齢は)でした。導入時の肺活量は予測肺活量の
36%程度でした. 15歳未満で経年的に側弯の角度評価が可能な10例においてみると、年間最大増は17℃(年齢9.1±2.0歳)となりました.UCMDは9歳前後数年の比較的年少の期間に側弯が著しく増悪します.
◆生命予後の観点
◆病因・病態
・優性遺伝のUCMD変異 : 遺伝子対の1方にだけ変異がある.
・劣勢遺伝のUCMD変異 : 1対の遺伝子の両方の遺伝子に変異がある.
ホモ接合性変異あるいは複合ヘテロ接合性変異によってUCMDを発症している患者さんは親御さんが保因者というという
事になります.以前は劣性遺伝性疾患として考えられてきましたが、最近では片側の染色体に変異がある(de novoの優性
変異)だけで発症している患者さんの方がむしろ多いという事が分かっています.
※筋線維膜特異欠損か完全欠損かは患者さんそれぞれで異なります.
個別のケースでは主治医や遺伝カウンセリングの専門家に相談することをお勧めします※
研究
現在は以上2点に着目した治療法開発研究がすすめられています.
特にオートファジー機能改善はCOL6関連筋疾患の治療戦略として注目されています.
・筋疾患百科事典
・「別冊日本臨床 新領域別症候群シリーズNo. 20 先天代謝異常症候群第2 版.大阪: 日本臨床社,2012: 736-740」
・Quijano-Roy S, Allamand V, Riahi N, et al. Predictive factors of severity and management of respiratory and orthopaedic complications in 16 Ullrich CMD patients [abstract]. Neuromuscl Disord 2007;17:844. Brinas L, Richard P, Quijano-Roy S, et al. Early onset collagen VI myopathies: Genetic and clinical correlations. Ann Neur
ol 2010;68:511-520.